千石教室の南です。
新しい学年が始まりました。皆さんにとってよい一年になることを願っています。
きょうは中学受験の算数についてお話ししたいと思います。
さてさっそく質問ですが、
中学受験の算数と難関大学の数学のうち、講師にとって教えやすいのはどちらだと思われますか?
いろいろな先生がいらっしゃるので、一律にいえないとは思うのですが、私の考えでは中学受験の算数ほど教えるのが難しいというのが実情だと思います。
キーワードは「方程式」です。
つるかめ算、流水算、旅人算など、大人が解こうとすれば、x,yの文字を使って方程式を立てればすぐに解けるはずです。
私も、必要がなければ今更わざわざ●●算を使って解こうとは思いません。
しかし、方程式を使うことを想定していない中学受験。教える側にとってみれば、結構難儀します。
当塾にも他の大手進学塾に通いながら、補習として通っていただいている生徒さんがいらっしゃいますが、
①特殊算を本質から理解しようとしている生徒
②特殊算を丸暗記で乗り切っている生徒
③方程式(◯や◻︎を使っているものの、限りなく方程式に近い場合も含む)を理解もせず教えられて、暗記で乗り切っている生徒
などさまざまです。
②であれば、他塾の教材をベースになぜそういう解き方をするのか時間をかけて掘り下げて教えればいいのですが、③の場合はなかなか大変です。
方程式の考え方というのは、中学1年生が1学期ほどの時間をかけて、正負の数、文字式を経てようやく習うものです。その過程の中で、プラスやマイナスの概念、移項の概念、かっこの概念などを習って初めて、方程式を解くことができます。
その勉強を、中学受験でさせるのはなかなか厳しい。
そうすると、ある程度説明した後、「割り切ってこれはこのまま覚えてね」と言わざるをえなくなります。
受験勉強は合格するためのものですから、割り切りも時には必要です。
ただ丸暗記だと、応用問題になった途端に解けなくなるのもまた真なり。
割り切りも時には必要ですが、それと同時に特殊算にどっしりと向き合い、しっかり理解して解けるようにするという「王道」に、できるかぎり真正面から取り組むべきでではないでしょうか。
さて、この特殊算。決して中学受験のための道具にすぎないわけではありません。
方程式では味わえない、算数・数学を本質から理解するための重要なツールでもあります。
例えば流水算。
AさんとBさんが同じ型の船に乗って、川上と川下から向かい合って進んだ場合にどれくらいかかるかを考えてみましょう。
大人なら、川上から進む船の速さをx、川下から進む船の速さをyとおき、所与の条件からx,yの方程式を立てて解くのではないでしょうか。
しかし中学受験の経た生徒の場合は、まず静水時の船の速さをxとおくことを考えるでしょう。
川上から来る船の速さは(x+川の流れの速さ)、川下から来る船の速さは(x−川の流れの速さ)と表せますから、両船は2xずつ近づくことがわかります。
使う文字の数が一つで済むわけです。
そして川の流れがどんな値であろうと、「AさんとBさんが合うまでの時間は不変であること」を本能的に知っているわけです。
文字を使う数を減らせることは大学受験でも大きな武器になります。
方程式はとてつもなく便利です。
ただ裏を返せば、
「何も考えなくても、わからない値に文字を割り当て、式を何個か立てて、ぐちゃぐちゃ解けばなんとか解ける」という思考に陥りがちです。
中学受験生にはそんな武器はない。でも、だからこそ、安易な方法に頼らずに、工夫して解くことで、算数・数学の本質に触れることができます。
いわば不自由な環境でこそ育つ、自由な発想があるというわけです。
中学受験でしか学ぶ機会のない特殊算。
算数が嫌いな生徒にとっては辛い分野かもしれませんが、「算数・数学の本質に触れることができるかも!」という前向きな考えで取り組んでいただきたいと思います。
フレック学習塾では、他の塾に通っている生徒さんの補習授業も、歓迎しています。
個別の能力、他塾での教わり方に応じて柔軟に対応させていただきます。
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